【金曜日の編集部】2022年2月4日

【金曜日の編集部】2022年2月4日

musit編集部による今週の振り返り。フライデー・ナイトに繰り広げる内省以上/酔いどれ未満。

PLAYBACK

編集部・翳目より

今朝は腹部を銃で撃たれる夢を見ました。狙われてるのか。

今週公開された、butohesの藤井さんに寄稿いただいた短編安藤エヌさんのエッセイ、どちらも編集を担当しています。「透過」はPeople In The Boxの2ndミニ・アルバム『Bird Hotel』収録の「レントゲン」をテーマにしながら、独白にも似たご自身の経験が織り込まれていて非常に訴求性が高く(特に終盤の流れが秀逸…)、藤井さんの表現者としての根底にある部分を垣間見るようでもありました。安藤さんの記事に関しても、エッセイの構造は保ちながらしっかりとwowakaのアーティスト性に言及しており、レビューとしても楽しめる内容ではないでしょうか。ヒトリエ、2016年の《TOKYO CALLING》で観た記憶が今でも鮮明に残っています。「日常と地球の額縁」が好きです。

WEEKLY COLUMN

宇多田ヒカル『BADモード』発売によせて

◯文=みくりや佐代子

宇多田ヒカルの8thアルバム『BADモード』がリリースとなりましたね。才能に圧倒される段階をとっくに通り過ぎた私達は、賞賛の言葉に「やっぱり」をつけて彼女を語ってしまいます。やっぱり宇多田ヒカルはすごい、やっぱり宇多田ヒカルは良い、と。

かくいう私もNetflixで配信されている過去のライブ映像『Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018』を見ながら、そのたたずまい、そこにいるだけで場が成立してしまう彼女の存在感に見惚れています。

思えば10代で恋愛に関する歌詞を綴るなど大人びていた宇多田ヒカルが、途中から少し重たいテーマというか、命や人間愛について歌うことが増えたように思い(6thアルバム『Fantôme』では如実でした)、「彼女はこのまま音楽を通して『生きる』を突き詰めていくのだろうか」と感じたことがありました。

もちろんそれは素晴らしいことなのだけど。ただ、創作するうえで痛みを伴ったり何かを削ったりするとしんどいよなあ、と心配したり。今書いてみて「誰が言うてんねん。マジで余計なお世話やわ」と筆が止まりそうですが、ぐっと耐えてこのまま行きますよ…!

けれども今回の『BADモード』はメッセージ性の強い楽曲も変わらずありつつ、彼女のフランクな面やユーモアセンスの見える楽曲も並んでいて、嬉しく思いました。「宇多田ヒカルさんが友達だったらいいのにな」と思いましたもん。普通思わないでしょう? あれほど素晴らしいアーティストに向かって「友達になりたい」なんて恐れ多いこと。

時々考えます。生きていく上で「生きる」自体に向き合うことは不可欠なのだけど、だからといって向き合ってばかりじゃ生きていけない。そんなジレンマについてです。

命とか愛とか、得体の知れない巨大なものは、本当に辛い時や反対に幸福な時にふとその存在を実感しますよね。でも普段の生活の中で常に頭の片隅にあるかと言われればそうでもない。なぜなら日常を遂行するのに手一杯だから。

だから今回、洗い物をしながら『BADモード』を流していて‘‘絶好調でもBADモードでも君に会いたい’’と聴こえた時、ここ(日常)にも来てくれたか、と思いました。嬉しかったな。何度でも言いたいです。やっぱり宇多田ヒカルは良い。それに尽きます。

musit編集部