【金曜日の編集部】2022年4月15日/スペインのワイン、シェリーって何?
musit編集部による1週間の振り返りと、所属ライターが週代わりでお送りするウィークリー・コラム。
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編集部・對馬より
今朝、家を出てふと目の前の公園に目を向けたらアオサギとご対面、思わず三度見し、駅へ急ぐ足を止めてまで写真をパシャパシャ撮ってしまいました。人間に慣れているのか、多少近付いても飛んで逃げるようなことはせず、のそのそと公園の奥へ歩いて行くのを数秒間見送りました。
それこそ、地元(札幌)の川なんかにはサギが飛来しているのをよく見かけて、橋を渡る時には必ず下を流れる川を覗き込んでサギがいないかどうか確認していたものですが(これを「サギチェック」と呼んでいた)、こんな東京の住宅街、しかもちょっとした池がいくつか存在する程度の小さな公園で、あんなにご立派なアオサギとの逢瀬があるなんて、夢にも思わないわけですよ。
とは言うものの、東京って意外と動物だったり昆虫だったり、かなり色々いますよね。多くは人工なんでしょうけど自然環境が整備されている場所も多くて、実は生態系が豊かなんじゃないかと思ったりします。この前なんて、昼下がりの原宿でハクビシンを見かけましたからね。夏になればカラスアゲハが飛ぶし、雨が降ればナメクジが出現するし、決して手放しで良い環境とは言い難い東京でも、みんなたくましく生きているんです。それに比べたら、人間は弱くて、とても愚かな生き物です。
WEEKLY COLUMN
スペインのワイン、シェリーって何?
◯文=仲川ドイツ
こんばんは。金曜日の夜っていうと未だに「7時からドラえもんだよな」って考えてしまう仲川ドイツが今週のコラムを担当します。前回は最終回目前だったゼンカイジャーへの想いを語りましたので、今回はドンブラザーズ…ではなくお酒の話。
僕は本職が酒屋勤務なんですが、お客様から「何のお酒が一番好きなの?」って質問をよく受けます。で、聞いてきたお客様が日本酒好きの方なら「やっぱ日本酒ですね」って答えを期待してるし、ビール好きなら同様に…という感じです。ご期待に添えない答えだと露骨にガッカリされることも多い。多分酒屋あるあるです。
ちなみに私は何と答えるかというと「シェリー」。もうね、ガッカリ通り越して聞かなかったことにされます。なにそれ、ヒドイ!

シェリーって日本ではマイナーですけど、本当に素晴らしいお酒なんですよ。私が思うシェリーの良さをいくつか挙げると、
・果実のアロマが穏やかで、合わせられる料理の幅が一般的な白ワインより広くて使い勝手が良い。
・度数が一般的なワインより少し高い(これは良い場合もそうでない場合もあるけど)。
・ウイスキーやブランデーより度数が断然低いのに、それらのスピリッツと肩を並べるエレガントな香りや味わいを堪能できる。
ね? 面白そうでしょ? 飲んでみたくなるでしょ?
そもそも「シェリーって何よ?」って思った方もいると思いますが、スペイン南部のアンダルシア地方・ヘレス(Jerez)という町で造られているワインの一種です。ヘレスはサーキットがあることでモータースポーツファンには有名な町ですね。
カテゴリーは「Fortified Wine」、日本語では「酒精強化ワイン」と言われ、ポルトガル北部のポートワイン、大西洋のマデイラ島で造られるマデイラワインとともに「世界三大酒精強化ワイン」と呼ばれています(参考資料:『シェリー、ポート、マデイラの本』明比淑子著)。

主原料は葡萄ですが、一般的なワインと違う点はアルコールを加えて度数を上げること。また一部はアルコール発酵後に「フロール」と呼ばれる産膜酵母によって独特の風味を与える点。もしくはあえて酸化させる点もシェリーの特徴です。味はライトな辛口タイプ、コクのある辛口タイプ、極甘口タイプ、それらのブレンド…とかなり多彩なのも特徴。酒精強化ワインって甘いってイメージが強いけど、むしろシェリーは辛口タイプが面白いと私は思います。
では、私のおすすめシェリーを3本紹介します。
バルデスピノ「マンサニージャ デリシオーサ エンラマ」
比較的ライトな辛口タイプ。シェリーの中で最も有名な「ティオペぺ」はフィノと呼ばれるタイプのシェリーですが、このフィノと基本的な製法は同じで、海に近いサンルーカルという町で熟成されたものが「マンサニージャ(マンサニーリャ)」というタイプになります。
ライトで辛口、フロールの影響でほんのり酸味があり、通常の白ワインと比較して少しアルコール度数が高いので、例えば魚介のフリットや生ハム、もしくはアンチョビと菜の花のパスタなどの塩気のあるつまみや料理によく合います。特にこれは「エンラマ(無濾過)」なので風味が豊か。コンテなど硬めのチーズにも最高ですね。飲み方は軽く冷やして小ぶりなグラスで。
ボデガス・カイドサ「ラウレアード オロロソ」
熟成させたコクのある辛口タイプ。酸化させながら熟成させるので色も濃いし、ドライフルーツやヘーゼルナッツを思わせる香りと凝縮したレーズンから甘さを抜きとったような独特のコクが特徴。つまみは香りの特徴と合わせてドライフルーツやナッツ、あとスパイスカレーにも抜群に合います。飲み方は常温でチビチビと。
この「オロロソ」というタイプはアルコール度数20度未満とウイスキーやブランデーより低いのに、それらに匹敵するような香り高さと味わいの深みがある。でも度数が低いので身体に負担が少ないという、結構良いことずくめなお酒だと思います(ウイスキーやブランデーが度数高いから悪いわけではないし、それぞれ替えが効かないお酒ですけどね)。
オズボーン(オスボルネ)「クリームシェリー」
オロロソに極甘口タイプのシェリーをブレンドした甘口タイプ。ロックで飲むのも良いんですが、これと炭酸水を1:1で割って氷を浮かべ、オレンジスライスを1枚浮かべる飲み方がオススメです。これは本当に美味い。無限に飲めます。
オズボーンの廉価シリーズは日本だと「やまや」でしか買えないのが残念なところなんですが、1本1,000円以下と激安! 通販でまとめ買いする価値アリです。
ね! 飲みたくなったでしょ!? でもシェリーを置いてる酒屋って結構少ないんですよ。ワインショップや洋酒が強い店に少しある程度。都内でもなかなかないのに、それ以外の地域だとハードル高いですよね。なので、まずはバーに行った時などにオーダーしてみてほしいなと思います。
ちなみに都内ではありますが、私のおすすめのお店は北千住「boqueron(ボケロン)」。様々なシェリーをお手頃価格で飲めて、料理もひと捻りあって本当に素晴らしい。是非行ってみて欲しいです。
と、シェリーについて長々と書き綴ってしまいましたが、musitは音楽メディアなので最後に少し音楽の話題も。シェリーはスペインのワインですので、編集部の對馬さんがおすすめするスペイン産バンドを紹介します。
Melenas『Dias Raros』
Stereolabを想起させるチープなシンセとシューゲイザー、ガレージ・ロックなどを混ぜ合わせたような不思議なバンドです。なんとも言えないテンションがクセになります。タイトルは英語で「Strange Days」を意味するとか。「Best Shoegaze Albums 2020」にも選出しました。(對馬)
あ、来日公演にDJで参加させてもらったロシア発マレーシア経由のポストパンク・バンド、Joi Noirも現在はバルセロナ在住ですね。
無理やり音楽の話題で締め括った感もありますが、週末のチルアウト・タイムの選択肢に是非シェリーとスペイン産バンドを加えて頂ければ嬉しいです。では。
musit編集部




