山梨からの刺客、Flying Daimyo──筒井康隆原作『ジャズ大名』に感銘を受けた彼らが放つアッパーな衝撃波
「とにかく早く音源をリリースしたくて」。Flying Daimyoのフロントマン・土橋洋祐が音楽活動を始めたきっかけはそのフレッシュな初期衝動と、稀代の小説家・筒井康隆原作の映画『ジャズ大名』のラストシーンだった。
Flying Daimyoは現在、山梨を拠点に活動を展開している音楽クリエイター集団。土橋洋祐と井上翔夢(とむ)が楽曲を手掛け、東放学園出身の古屋ルミナが映像を制作。アヴァンギャルドな作品性に寄り添うアートワークも全て土橋が手掛けている。
‘‘こんにちわドン! こんにちわズギャアン こんにちわドゥユーン’’
彼らは昨年1月に1stシングルとなる「こんにちわ地球」をリリース。長年執筆業に従事していながら初めて起こすような文字列(!)、そして多声録音で耳元に絶え間なく降り注ぐ「こんにちわ」(「は」ではなくあえて「わ」を使っている点もクレイジーな才能の片鱗を窺うことができ、この楽曲のミソのように思う)の嵐。破天荒でエネルギッシュな土橋の音楽性が遺憾なく発揮されており、どこかクセになる本楽曲。土橋が古屋から1986年公開の映画『ジャズ大名』を勧められて受けた衝撃のままに制作したという背景から、ある意味で特異なアミューズメント性を感じられるのも納得だ。
まさに「山梨からの刺客(いや、大名か…)」とでも言うべきであろう、カオスでファンキーな音像を見せた「こんにちわ地球」から約1年、彼らは先月30日に2ndシングルとなる「warp!!!」を発表。約5分間の比較的長尺な本楽曲では前作と打って変わり、元SHE IS SUMMERのMICOを想起させるような、気品ある佇まいの中に可愛らしさを感じる女性ヴォーカルを主体に展開。全く別方向からの視点で我々にさらなるアプローチをかけた。
万華鏡を覗き込むように華美な音像に呼応する歌声と‘‘言語じゃ伝わらない時空の共有 夢の世界でも輝く少女の微笑み’’といった文学的なフレーズの掛け算は混沌としていながらも心地良く、タイトル通りに聴き手を異空間へと「ワープ」させてくれるような楽曲に仕上がっている。
また、映像担当の古屋がメガホンを取って制作したMVについても触れておきたい。土橋から受け渡された楽曲からイメージを膨らませ、異種同士の繋がりをストーリー性をもって描いた「こんにちわ地球」と、‘‘教室に流れる少女の旋律’’というフレーズから2人の女子生徒が同じ空間の中で溶け合うようなシーンに焦点を当てた「warp!!!」。青春時代への懐古とフィットするような清々しい映像は、画面の前の我々にどこか儚げなノスタルジーを付与しているように思う。
Flying Daimyoはこの先、メンバーを募り、東京に拠点を移して活動領域を広げていく予定。また現時点では音源のリリースのみではあるが、今後ライブ活動を行う際にはザ・フレーミング・リップスやボアダムスのように、爆発的なパフォーマンスで訪れた観客に衝撃波を与えながら活動を展開していきたいという。
現在21歳の土橋洋祐率いるFlying Daimyo。未知なる探究心が咆哮のように鳴り響いて生まれる音楽は、今から約35年前に放映された『ジャズ大名』で描かれる奇抜さと狂乱を孕みながら、天下を目指して人から人へと帯電していく。うら若き彼らの今後の活躍に是非、注目していただきたい。
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1st Single「こんにちわ地球」

Label – Self Released
Release – 2021/01/26
※「こんにちわ地球」各種配信リンクはこちら
https://linkco.re/R3yaEXTC
2nd Single「warp!!!」

Label – Self Released
Release – 2022/03/30
※「warp!!!」各種配信リンクはこちら
https://linkco.re/R4PxBm1Q?lang=ja
Flying Daimyo
Flying Daimyo:@FLYDMY
土橋洋祐 Twitter:@DGO_FLYDMY
井上翔夢
古屋ルミナ Twitter:@flyingrumina
星野

